TECNOFORM JOURNAL

05 / MOON & MARS CONSTRUCTION

月と火星で、
建設は何から始まるのか

最初に現れるのは、家の外観ではありません。土を動かす機械、着陸の衝撃から設備を守る地盤、電力と通信、そして壊れたときに直せる仕組みです。未来の建設現場を、いま確認できる研究から描きます。

最終確認日:2026年9月6日|構想・研究・実証・販売状況を区別して記載

画像について
このページの2枚は、NASAが公開する月・火星の建設技術研究を参照して制作した編集再構成です。実在する月面・火星基地の写真ではありません。

月|まず「土を扱う能力」をつくる

NASAは月面の長期活動に必要な基盤として、電力、水、着陸パッド、道路、粉じん対策、資源利用、無人建設を挙げています。建築の前に必要なのは、レゴリスを掘り、運び、盛り、必要な形にすることです。地球なら大型重機の重さが支える作業も、重力が小さい月では別の機構が必要になります。

月面でレゴリスを用いて居住施設の外殻を施工する無人建設機械の編集再構成
編集再構成:月面レゴリスを扱う無人施工の予想図。実在する月面基地の写真ではありません。

月の施工機械に求められるのは、造形精度だけではありません。極端な温度、摩耗性の高い粉じん、通信遅延、長時間の自律運転のなかで、掘削・運搬・整地・組立を止めずに行うことです。NASAのIPExは、軽量の機械でも月の土を効率よく掘削・運搬するための実証機として開発されています。

火星|住居は「外殻」と「運用」を一緒につくる

火星では、気密性を持つ居住モジュールを地球から運び、その周囲に現地材料を使った防護層や外殻を重ねる考え方が有力です。3Dプリントは、居住空間を一度で完成させる魔法ではありません。放射線、温度変化、砂塵から守る層を現地でつくり、必要な箇所を補修し続けるための施工手段になり得ます。

火星で居住モジュールの防護層を施工・補修する無人建設機械の編集再構成
編集再構成:居住モジュールを現地材料の層で守り、補修する火星施工の予想図。実在する火星基地の写真ではありません。

建築家の仕事は、壁の形で終わらない

宇宙の住居では、構造、設備、物流、施工ロボット、点検、居住者の心理が切り離せません。壁を印刷する機械が止まったら誰が復旧するのか。空調や電力を更新するとき、殻をどう開けて戻すのか。自然光や眺めの乏しい環境で、長期滞在者の感覚をどう守るのか。Mars Ice Houseが示した価値も、氷を使う造形だけでなく、環境と人の間を建築で調整しようとした点にあります。

地球の建設へ持ち帰れること

宇宙で問われること地球の建設へ返る問い
現地材料を使えるか輸送量・廃棄物・地域資源を減らしながら、品質をどう安定させるか。
無人施工を監督できるか自動施工の停止条件、検査記録、人間承認をどこに置くか。
補修を前提にできるか更新しやすい納まり、材料情報、設備交換の余地を最初から残せるか。
閉鎖環境で暮らせるか性能だけでなく、光、音、眺め、プライバシー、日常の質を扱えるか。

一次情報・参照