TECNOFORM JOURNAL

04 / MARS HABITAT TIMELINE

火星の住まいは、
どこまで現実になったか

火星に人が暮らす基地は、まだありません。しかし、紙上の構想だけだった住まいは、材料試験、縮尺施工、そして地球上で人が一年暮らす実験施設へ進みました。何が実物で、何がまだ計画なのかを分けてたどります。

最終確認日:2026年9月6日|構想・研究・実証・販売状況を区別して記載

最初に確認
2026年9月現在、火星上に建設済みの有人住宅・有人基地はありません。以下の火星風景は構想図または編集再構成であり、実写の火星基地ではありません。
火星住宅研究の変遷を示す編集再構成画像
編集再構成:氷殻の構想、積層造形の発展、地球上の実物実験への移行。NASA公開資料を参照して制作した説明画像で、実在する火星基地の写真ではありません。

2015|まず、建築として考えた

NASAの3D-Printed Habitat Challengeは、最初から完成住宅を競ったのではありません。2015年のPhase 1は建築設計競技で、SEArch+/Clouds AOのMars Ice Houseが首位となりました。火星の水を氷殻に利用し、放射線から守りながら光を取り込む提案です。

Mars Ice Houseの火星上の構想図
2015年 Mars Ice Houseの構想図。画像:SEArch+/Clouds AO via NASA。完成した火星住宅の実写ではありません。

2017|形より先に、材料を試した

Phase 2では、現地材料と再利用物を含む材料配合、梁や壁などの構造部材、圧縮・曲げ・耐久性能が焦点になりました。宇宙住宅の難しさは、プリンターの造形速度だけでなく、現地で得られる材料から安全な構造をつくれるかにあります。

2019|縮尺模型を、自動で建てる段階へ

Phase 3はBIMによる仮想設計と、実際の積層施工を組み合わせました。最終段階では3分の1スケールの住居を現場で造形し、AI SpaceFactoryが総合首位となりました。ここで競われたのは火星での完成住宅ではなく、地球上で行う自動施工と縮尺実証です。

AI SpaceFactoryによるMARSHA火星住居の構想図
2019年のMARSHA構想図。画像:AI SpaceFactory via NASA。実写ではなく、競技提案の可視化です。

2021–2024|人が一年暮らす実物へ

ICONは2021年、NASAジョンソン宇宙センター内に約1,700平方フィートのMars Dune Alphaを3Dプリントしました。これは火星ではなく米国テキサス州にあるアナログ施設です。4人の参加者が隔離、通信遅延、資源制約、機器故障などを経験するCHAPEA Mission 1は2023年6月に始まり、2024年7月に終了しました。

Mars Dune Alphaの壁を積層造形する実際の施工写真
Mars Dune Alphaの実際の積層施工。写真:ICON via NASA。火星ではなく、地球上の研究施設です。

2025–2026|建物だけでなく、暮らしを測る

CHAPEA Mission 2では4人が同じ3Dプリント施設で生活し、2026年10月31日までの予定で健康、行動、作業性能を検証しています。現在の研究の中心は「形をつくれるか」から、「長期隔離下で人と設備と運用が持続するか」へ広がっています。

次の段階|現地資源と月・火星をつなぐ

NASAのMMPACTは、月や火星のレゴリスを使う自律施工を研究しています。ICONのOlympusも現地資源を建材へ変えるシステムとして開発中です。一方、NASAが2027年以降に予定する新しいMoon and Mars Exploration Analogは、HERAを移動船、CHAPEAを地上基地に見立て、移動と滞在を一続きで検証します。いずれも火星配備済みの住宅商品ではありません。

段階確認できた到達点まだ未達のこと
設計放射線、現地材料、採光、気密を統合した複数の構想火星上での建築確認と長期運用
材料・施工模擬レゴリス、積層造形、部材試験、縮尺施工火星環境での無人連続施工と補修
居住地球上の3Dプリント施設で一年規模の隔離実験低重力・放射線・実火星資源下での有人生活

一次情報・画像出典